美樹本晴彦のイラストの変化

何か短いコラムを書きたくなったので。ちょっとした話題を。昨年、知り合いのイラストレーターとともに某イベントに行ったのだが、そこで美樹本晴彦の書き下ろしのリン・ミンメイのイラストを見て、ちょっと衝撃を覚えた。
あ、折角だから画像にQUOVADISを入れてみました。
スクウェア・エニックスで描いている田中芳樹の「タイタニア」のカバー、「機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル」でもアレ?と思っていたのだが、長髪のリン・ミンメイの様なイラストを描くと……しかもマンガ向けにストーリー進捗でいろいろな表情を用意しなくても良いキャラクターであればあるほど……意図しているイラストの変化と方向性がはっきり見える。ひょっとすると今までというかデビュー以来、引きずってきたWet感とは違ったテイストを出そうとしている。
「美樹本さん、萌えを理解しつつあります?」
「まぁ用語はともかくとして、あきらかにイラストを変えつつあるなぁ……」
INNOCENCE―美樹本晴彦画集
画集のカバー。これだと少しムムという感じだが、リン・ミンメイの新バージョンが凄く良い。
美樹本晴彦は、Wetな感じで女の子を描く特徴があって、アナログからCGへ移行したのは5〜6年までだが、その際もアナログテイストをCG上で如何に再現するかという方向でCGを道具として利用していた。
ところが、その特徴とも言える眼の描き方を変化させ、同時に「いのまたむつみ」がCGで目指していた方向をより深化させたとでもいえばいいのだろうか? 非常に野心的な試みに取り組んでいる。
加法混色(光の三原色)・減法混色(絵の具)の違いがあるため、アナログが上手い人であればあるほどCG導入当初は暗いイラストを描いてくる場合が多い。それはアナログが再現できないとか発色技法が違うため色が濁るとも違って、暗いイラストが非常に綺麗に見え、その面白さにハマるからだ。割といのまたむつみがそれにハマっていて個人的な病気もあったらしく、しばらく暗めイラストが続いたのに対して、美樹本は最初から自分のテイストを商業レベルでCG上に再現するという明確な意図が見え、ハマることなくアナログイラストの再現性を随一に考えて導入。最初から自身のアラログイラスト再現率70%ぐらいで初めてCGを出し、その後80%→90%と再現性をあげ、ほぼ完成の領域に近づいていた。
その延長線上に最近のイラストがあるどうかまでは分からないが、また新しいテイストの中で、「萌え」を描こうとしているあたり、非常にビックリさせられた。