天広直人から得た「オタクデータベース論の矛盾」演繹してオタクムーヴメント解釈

上記と直結しているわけでは全くないが、データとして得られた貴重な情報として。以下は取材前準備として会った天広直人から聞いた話だ。
話を聞くまで分からなかったのだが、天広直人シスター・プリンセスのファン層の4割は女性なのだそうだ。しかもそのヴォリュームゾーンにかなりの女子小学生・中学生が含まれていることが分かった。
それで分かったのは、なぜシスタープリンセスの波及形態だ。それは単にオタク層からのみで構成されたモノではなく、女子を含む小中高校生の分厚いマーケットであったことが分かる。
天広直人と話していて良く話題に出るのが「テクスチャ感」「マテリアル感」といったイラストレーター用語というよりも、3DCG用語なのだが、そうしたテイストを洋服・キャラクターを描く上で非常に大切にしていることが分かる。
それらが天広直人の描く……例えば『女の子が付けている可愛いアクセサリー』『デザイナーズブランドの服』『インポートデザインの自転車』であり、『クイーンズ伊勢丹(高級食材店)の紙袋に焼きたてのフランスパンを2本入れた女の子がストリートを歩いている風景』……詳細なハイクオリティのイラストに結実し、その書き込みが醸し出す「洒落た雰囲気」こそが、天広直人をして他の所謂「萌え」イラストレーターとを隔絶している部分になっているらしい。
そしてこの「洒落た雰囲気」にコンビニコスメにはまっている小中学生女子がフィーチャーしているらしい。
とりわけ面白いと思ったのは、基本的にシスプリを好んでいる層が、所謂、順列組み合わせのオタクデータベースとまったく無縁という話だった。なるほど。アンケートハガキがそんな感じだった。むしろオタク層のファンハガキから得られるモノが非常に少ない。
考えてみればさもありなん、中学生にはアクセスしなきゃならない美少女ゲームキャラクターデザインの歴史とかを持っているはずがないのだから。
小中学生が熱中するほどのハイクオリティ……かつ大人も楽しめる奥深さを持つモノだけが、オタク市場を席巻しているという視点は、非常に新鮮かつ実感のある情報として貴重だった。
これはライトノベル完全読本VOl.2の巻頭文を書いてもらおうかと考えている、別のラノベ作家から指摘を受けたのだが、「オタクムーヴメント」とは、本来的にはオタク層に向けられていない高品質コンテンツが結果的にオタク層を取り込んでムーヴメントにしているだけに過ぎないのかもしれない。
確かにオイラもガンダムを見たとき「これは単なる子供向けのアニメじゃないんだ」といって中学生時分に熱中していた気がする。本来的には子供向けなんだけど。

サイエンス・フィクションの黄金時代は12(才)である。
(デイヴィット・ハートウェル)

という言説と相まって、福島正実のジュヴナイルへの姿勢・小学生票を最重要視する週刊ジャンプの編集方針などと相まって理解しつつあるところである。
【追記】
萌えゲームが迎えた「曲がり角」
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0409/07/news083.html
に書かれている言説がどうもパッとせず、その結果が「双恋」の売れ行きやファン層の悪さとも絡んでちょっと分かってきたような気がする。
シスプリを小学生女子が買っても、双恋は買わないという視点から見るとよく分かる。