00年代のキノの旅、GA文庫「ジョン平とぼくと」待望の2巻が発売。

現代を舞台にした魔法モノとして白眉といってもいいだろう。同様の作品はいくつもあるが、非常に余裕を持った書き方をしつつ、頭二つ分、大西科学氏の著作の出来がよい。これを三ヶ月で書けるのか……。

ジョン平とぼくと2 ジョン平と去っていった猫 (GA文庫)

ジョン平とぼくと2 ジョン平と去っていった猫 (GA文庫)


子供向けにワザと伏線を見え見えにしているくせに、本読みにもアッと思わせる独語での伏線を入れていたりするから小憎らしい。
2巻でいよいよ「ジョン平の特殊能力がア●●・マ●●●・●ェ●であることが明かされるのか!」と思ったら、明かさないし。引っ張る引っ張る。こーゆー見え見えの伏線をベストのタイミングで明かそうと引っ張るテクニカルさというのはどこから出てくるのだろう。
あと
「おんなのこ、を、いじめたら、だめ、だ」
とかね。こーゆーのをまっすぐに書けるという状況に持ち込むのがスゴイ。
90年代の子供向けライトノベルの筆頭が、出来&売れ行きともに「キノの旅」であるのは間違いないが、長期シリーズになった「キノの旅」にはやっぱり入れこみにくい点も多々あった。
主人公が絶対的に強すぎたり、あとシニカル視点で語れる世界の残酷さというのはあるけれども、結局、シニカル思考は《代替手段》としては使えないというのが大きい。
その点で「ジョン平とぼくと」は、2巻連続で主人公に失恋させながらも成長させるところといい、「少年に読ませるラノベ」としての理想型になっている。
響鬼みたいな説教臭い大人が出てこないというのもポイント高い。
1巻にくらべて科学での解決がちょっと弱かったけど、そこは次巻に期待ということで。
で、現代世界には存在しないような敵側の強力な魔法が次々と明らかになっていくし。なんかテレポート?まで出たよ。
ツンデレ先生ヒロインとして、陰陽庁の寧先生*1も大活躍で次巻も楽しみ。
ジョン平に関しては語りたい事は山ほどあるのだけども、ネタバレにもなるので、それは来月にでも。
【参考リンク】
大西科学
GA文庫:新人情報局; 大西科学さんインタビュー INDEX
GA Graphic:GA文庫:「ジョン平と一つの指輪:前編」 INDEX

*1:相変わらず負けっぱなしだけど