神野オキナの名解説文

桜庭一樹のことを書いた以上は、神野オキナのことを書かずにはいかないだろう【というかそうして振り返ってみるとファミ通エンタテインメント大賞1回目は豊作だったのか? 公式サイトのデータすら残されていないというスゴイ状況なのだが】
神野オキナが朝松健著の『魔術戦士6 冥府召還』につけた解説文が非常に面白い。「遊びにいくヨ!」しか知らない読者にとってもこれは必読の名解説文なのでそれを少し抜粋。

そのころ、ソノラマ文庫には神がいた。

20年近く昔……80年代も半ばの頃である。

現在は失われてしまった、あの緑の背表紙を古本屋で見かけるだけで、今も胸がときめく。
だから、我々よりも年上の人々が、「ハヤカワの銀背」を見るたびに得るであろう感慨を、私たちの世代は、ある程度理解することができる。
平井和正のウルフガイも、幻魔大戦も、我々の世代が物心ついたときには、ある程度の評価が定まり、夢中でむさぼり読みはしたものの、我を忘れるほど熱狂し、酔うことはすでにできなかった。
それは我々の兄や、姉の世代のものだったからだ。
そこへ、不意にソノラマ文庫は現れた。
リアルタイムの、「我々のために語られた」物語。
(中略)
そう、もう一つ個人的なことを。
朝松健は私が本読みとして初めて「自分で見つけた」作家なのである。
この小説(注:魔境の幻影、朝松健著・平野俊弘イラスト)を手にし、読み終えたときの奇妙な違和感と「なんか、すごく面白い物を見つけた」という、本読みにしかわからない興奮と、誇らしさを未だに覚えている。