ライトノベル完全読本で予想外だったこと2、オタク世代間格差はネットの情報波及力単体では埋められない

【未整理だけど、大体こんな感じ】
ネットの情報って本当に届かない場合が多いことに気付かされる。
ライトノベルに関する話題をふっているサイトでは情報すでに入っているだろうから、目新しく無いけれど、ネットをやっていない人には説明しなきゃ……と金原瑞人のコラムには<古橋・秋山・金原ひとみ>を触れてくれるように依頼したのだが、初耳という人が多かったことに驚かされた。

古橋秀之秋山瑞人は、金原瑞人の創作ゼミ出身」
秋山瑞人は、金原瑞人を尊敬しているのでPNの名前が瑞人」
金原瑞人の娘が、芥川賞受賞作家の金原ひとみ

情報深度によって、把握のレベルにはいくつかあるだろうとは思っていたが、ネットでライトノベル系サイトの運営者でも知らない人が多かったのには少し衝撃を覚えた。
古橋と秋山が同じ大学の先輩・後輩関係にあることは(割とあちこちで喧伝されているので)、ほぼ100%知られていた。
同じゼミであって、そここそが小説の書き方を教えてくれた金原瑞人の創作ゼミだったという話題は、何度かイベント、ネットでも出ていたので割と知られているだろうと思っていた。編集スタッフから聴いたのだが、イベントでいうと創作ゼミについての話題は、「大森望のサイト」「第1回?のライトノベルフェスティバル」「SF大会」では複数回触れられていたらしい。
ライトノベルフェスティバル関連のコミケ同人誌ブースでそれらに関する同人誌が売られるので買ってきてほしいと外国の友人から頼まれたこともある(オイラはそれで関係を知ったのだから、2年くらい前だろうか?) 外国のライトノベルファンが知っているくらいなのだから、有名なのだろうと思っていた。
金原ひとみ金原瑞人の関係に関しても、どんどん露出が増えていく中で、情報がネットに掲載されていったので(少なくとも大森望サイトとかまぁ押さえられているだろうなぁというサイトには)、知っている人は多いのだろうと思っていた。

ところが、有里さんも意外な点として指摘したのだが、ネットのサイト運営者でも知らない人が多かった。しかも割と発売日を心待ちにして発売日に買ったと思われるサイトで「金原瑞人さんのコラムに知らないことが多くのっていて楽しかった」と書かれている。う〜ん。ネットにすら掲載されたことのない本邦初の情報はそこじゃないんだけどなぁ。

ただ、ネットを少ししかやっていない人がもっとも注目する情報は、おそらくこの金原瑞人の「創作ゼミ」に関するコラムなんじゃないかという気はしていた。残念ながら、今年は金原瑞人担当の創作ゼミが開かれていないと言うことと、タイミングの関係で別の先生による創作ゼミの合宿を取材することが出来なかったので、そんなにページを割けずにコラムのみのなったのだけれども(次号以降の取材先ですね)。
小説賞への投稿がどんどん増えていく風潮の中で、ライトノベル小説家志望の人間ならこの本を買う可能性が高いだろうという目算をたて、その人が必ず注目する視点も盛り込もうと思っていた。

初心から上級者まで楽しめるのが「作家アンケート デビューした頃」
初心者が楽しめるのが「金原瑞人 創作ゼミコラム」
中級者が楽しめるのが「冲方×古橋対談」「富野×福井対談」
上級者が楽しめるのが「岩井×中村×森鼎談」
(編集者インタビューはまた少し視点が違ったつもりだったんだけど)

でも実際には、中級者まで「創作ゼミコラム」を楽しんでいる! これは鼎談の面白さを伝えるのは苦労するなぁと感じた(これは、「予想外の3 作家の踏み込みと反応」で取り上げる予定)

ところがねぇ〜、面白いことに「ネットにのっているんだから、これは当然知っているでしょ」という情報格差は、自分自身にも言えた。
「君も当然知ってるでしょ」と言われながら知らないことがぞろぞろ出てくる。

1)豊田有恒がライトノベル草創時代、八面六臂の活躍をしたこと
2)ライトノベルという呼称はNIFのシスオペが創ったが、それは神北恵太だったこと
3)トリトンファンクラブにおける唐沢俊一の活躍
【読本には2しか掲載されてないが】

いや……これはほんの部分でしかない。オタク0世代が行ったことは比較的第1世代に継承されているのだけれども、1世代→2世代、2世代→3世代って本当に継承されていないのだなと感じた(ちなみに−1世代になってくるともう手塚治虫とか横山光輝とかが逸話にぞろぞろ出てくるので大変だ)。
多分、関連書籍は山ほど出ているにも関わらず、非常に困ったことに本は絶版がはやく、イベントは軒並み参加者を減らしてる。この現状では多くのネット検索に頼らざるを得ないのだけれども、ネットも嗜好により巡回サイトの偏りがあって、情報は伝わりにくくなっているし、なんといってもソース検証がしにくい。
【それはこのサイトも同じであることは含みおくこと】

くそ〜、この世代格差をなんとかしつつ、ちゃんと事実に基づいていて、批評の基礎資料となる情報も網羅して、売れる企画やアクセスの多いサイトをつくるのか。大変だ。
今売れていれば、歴史検証は敢えてしなくてもというのも一理はあるわけで……。
結局、一人一人、手間かかっても実際に会って検証して作成していくしかないかぁ。

【追記】
伝えなければならないのだけれども、口伝でしか伝えられないことと言うのもあるわけで(嘘みたいだ)。
某小説家に協力を要請して原案を書いてもらい、業界からかなり遠い石直和にリライトを頼んだ「PBMとライトノベルの意外な関係」の脚注の中に<トリトンファンクラブに参加していた出版人>とかあるけど、珍しいでしょ、<出版人>って。編集者なら編集者って書きます。複数の人から基礎知識だと責められたが、これこそ口伝で伝えてくれなきゃわかんないよ。色々あるなぁ……。

【脱線】
「言論界を戦場にたとえると、雑誌は前線で単行本は陣地に近い」と浅田彰が書いていた(うろ覚え)。要するに「雑誌での論争はまだ整理されていない部分があるけれど、単行本はある程度、時間もたち安定することで依拠しやすい」ということなんじゃろうと高校生のオイラは理解していた。面と向かっての対談は、逆に人格というノイズが入るから、どうなのかなぁとかぼんやり考えていた(これは後に「朝まで生TV」の登場でああこういうモノかと実感した)
当初は、「ネットが普及すると、前線ってネットになるんかなぁ? 情報伝達力はあがるんだろうなぁ」とのんきな理解をしていたら、「原稿料なしの書き散らし」「咀嚼するまもなく脊髄反射で書けるネット論争」というのは、ベトナムジャングル戦に近いのかも。
加えて「ゴーマニズム宣言の登場」「2CHの登場」は、いっそう、情報伝達に苦労するようになってるし。雑誌VS雑誌、単行本VS単行本に対して、ネットが絡んできたらどうなるのかよく分からん。
いくつか情報集めて検証中。