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「HEROES/ヒーローズ」を構造分析することで、アメリカのゼロ年代を読む

TV番組

【時間がないのでとりあえずアップするけど、後で結構描き直す】
ようやく四話を見て面白くなってきた「HEROES/ヒーローズ」。けれども「HEROES/ヒーローズ」って非常にアメリカ的な物語であるので、なかなか日本で売っていくのは難しいだろうなぁと思う。「HEROES/ヒーローズ」は、「911以後のアメリカを再統合するドラマ」という部分が強い。だから日本人の感覚からすると分からない部分が多すぎるのがネックになりそうな気がする。
現在の日本でのプロモとしては、ヒロ・マシオカが登場していることで、「アメリカで大活躍の日本俳優」的な捉え方をされている。だから日本向けみたいな感じでも見られているけれども、それだけに注視しているとHeroesの持っている構造はとても見えにくいのかもしれない。
「HEROES/ヒーローズ」にはアメリカ人の心情を読み解く解説書が必要だと思う。
最初に感じたのは不死身のチアガール、クレアのシーンだろうか。自分が不死身であることに気が付いてしまった彼女は、科学オタクのザックという同級生にカメラマン役をさせて、高所から飛び降りてもすぐに回復する能力の記録を行っている。
ザック少年には、「月曜日に会ったら、ちゃんとロッカー前で話しかけるから」ということで協力させているわけだ。……で、このあたりでアメリカの学園生活を知らない人は、なんでそれが協力の対価報酬になるのか分からなくなる(笑)。ここでいきなりアメリカのスクールカーストネタだもんなぁ。
アメリカ南部では、スクールカーストのAクラスには、アメフト選手とチアガールが来る。高校生の社交場であるロッカー前やカフェテリアでは、誰と誰が話すかというのが、如実にスクールカーストを現す。つまりクレアは、「オタクの貴方に人前で話しかけてあげるから、自分の実験に協力しろ」と言っているわけだ。
まぁそういう面白いところがありつつ、自分としてはまだ今一つ乗り切れなかったHeroesなのだけど、小説家の新城カズマさんと連絡取り合っているウチに「HEROES/ヒーローズのアメリカドラマに置ける位置付け」というのを聞くことが出来て、これが非常に興味深かったのでちょっと自分の考察も付け加えつつ書いてみようと思う。
要するにHeroesを構造解釈していくと、今、アメリカのリベラルが考えている新しい統合の形の様なモノが見えてくるようだ。
様々な超能力を持った人が集まってくるというストーリーとしては、古くは「幻魔大戦」とか、奇妙な超能力の混淆としては「ジョジョの奇妙な冒険」からスタートしたカードバトル的な「異能学園モノ」の一派生としてみることもできるだろうけど、根本的なところで、「911に傷ついたアメリカを救う物語」として成立しているところが、Heroesの特徴なのかもしれない。

共和党・モンロー主義的な「24」と、民主党・国際同盟主義的な「HEROES/ヒーローズ」

「HEROES/ヒーローズ」の第一話最後で予知されるニューヨークでの核爆弾爆発。これを阻止するというのが「HEROES/ヒーローズ」での大目標だ。ところがこのストーリーの肝が、二発原爆を落とされたという日本人的な観点から見ると、「ニューヨークでの核爆発」が直結して「世界の危機」というのが分かりにくい。多分、それはアメリカが911テロによって、どれほど傷ついたかといことが肌感覚で分からないからだと思う。
あと超能力者集団が何かと戦うってなると、やっぱり世界滅亡を画策する別の超能力者集団とか、宇宙壊滅を狙う幻魔とかを考えちゃうんだよね、第2世代オタクとしては(笑)。ニューヨーク核爆弾テロ? そんなのアルカイダでも考えるジャンとか(苦笑)。
おなじTVドラマとして日本でも大ヒットし、海外ドラマの文法を変えてしまった「24」がある。けれども「24」においては、テロを防ぐ手段が極めてモンロー主義的というか、共和党的だ(それでもFOXのTVドラマの中ではかなりリベラル寄りだとは思う)。

  1. ジャック・バウアーは、テロを防ぐためであれば法的手続きや合意をまったく無視して突っ走る。
  2. 中国はもう潜在的に仮想敵国
  3. アメリカ大統領夫人は絵に描いたようなビッチ(笑)
  4. 南米は麻薬の巣で、不法移民はバリケードで追い払え
  5. 石油を掘るのは重要な仕事だ
  6. 不良娘や不良息子は、親的存在からの暴力によって矯正されるというのも手段としてアリ
  7. まぁライスが大統領になるというのもオプションとしてはアリ
  8. 露助は味方になったけれども基本的に信用出来ねぇ
  9. コンピュータに強いハッカーはやっぱり人間的に劣っているし、ブスだよな

って感じで世界観は超シンプルに出来上がっている。だからこそ1話を見ただけで、比較的見通しが尽きやすい。
あと、とにかく俺が「24」を見ててスゲェと思うのは、「24」時間の間にどんだけスタッフが首になるんだと(苦笑)。こんなにアメリカ企業では「オマエは首だ!」と言い続けるのかと思うと、肉食民族はちがうなぁと。共和党的というか、アングロサクソン的(大笑)
ところがね……「HEROES/ヒーローズ」の世界観はとても見えにくい。世界観の謎がストーリーを引っ張っているという意味ではなくって、その《心情的な》世界観がアメリカ人には見えやすくても日本人には見えにくくなっているところにどうやら原因があるようだ。
「24」も「HEROES」も「テロが存在する不透明な世界」に向き合っていくというのは同じだ。けれども新しいカーボーイのイコンとなったジャック・バウアーが孤軍奮闘して、テロを根絶していく「24」に対して、「HEROES/ヒーローズ」は「多種多様な人々が持っている歴史観や能力を、一つ一つのピースとして、統合していくことによって、テロの存在する世界に向き合っていこう」というところが大きく異なる。
一般の人々が、「タイツをはく」=「特別な表象儀式を経てヒーロー化する」のではなく、「普通の服を着たままで社会を再統合していこう」というのが、テーマとして底流に流れていることなんだろうね。

Heroesの設定が、如何に多民族的になされているか。

そういった観点から見ていくと、
◆キャラクターの姓名自体が多民族的
「HEROES/ヒーローズ」の主要キャラクターを並べると以下のようになる。
クレア・ベネット、ヒロ・ナカムラ、ピーター・ペトレリ、ネイサン・ペトレリ、アイザック・メンデス、シモーヌ・デヴォー、ニキ・サンダース、マイカ・サンダース、マット・パークマン、モヒンダー・スレシュ
乙木には人種間の違いぐらいしか分からないのだが、新城カズマ氏に言わせると、キャラクターの名前が民族的に多用なのだそうだ。南部に多い姓、北部に多い姓等々と人種や地域にバラけて名付けられているらしい。
◆異様に多い異人種間カップル
ニキ・サンダース/D.L.ホーキンス
シモーヌ・デヴォー/アイザック・メンデス/ピーター・ペトレリ
モヒンダー・スレッシュ/モヒンダーの部屋を訪ねてくる隣人の女の子
それからアンドウ君がニキ・サンダースのインターネット画像を見ていたりなど、むしろ積極的に異人種に惹かれるようなかたちで様々な恋愛模様が展開している。現代のアメリカテレビドラマでは異人種間カップル自体は、番組の彩りとして珍しい物ではなくなってきているけれども、カップルのほとんどが異人種間であるというのは非常に珍しい。
◆並立する国際的な歴史観
時間と空間の跳躍能力を持っているヒロからすると、ニューヨークでの核爆弾テロをいかに防ぐかというループ時間ものの様に見える【東浩紀史観(笑)】。あとモヒンダーの科白にも「時間は直線ではなくて円環だ」というものがある。
その見方は間違っていないけれども、個人的にはループ史観というよりも、アジアを含む幾つもの歴史観が、米国中心的な歴史観と並置しておかれて、そこから「911テロを起こさない史観とは何だったのか?」みたいなのをあぶり出そうとしているような気がする。
東さんがループものとセカイ系を語る時は、好き過ぎちゃってひいきの引き倒しになることが多いので要注意だ(笑)
A)麻薬を打つことで未来を見るアイザックのヒッピー的な史観
B)アメリカとはまったく異質な文化観点から歴史を捉えるヒロの日本的な史観
C)インド系学者モヒンダーの進化論と時間円環史観
とかが読み取れるような気がする。このあたり田村英里子が日本のお姫様として出るのも期待したいところ。
◆シャマラン「アンブレイカブル」からの引用
「主要キャラクターがインド人」であり、世界観説明にシャマラン監督の「アンブレイカブル」の様にアメコミが使われているように、如実にアメコミの影響が見える。新城カズマ氏に言わせると、「to be continued」を含めて出てくる文字フォントがすべてアメコミを意識していることや、未来予知出来るアイザックがアメコミ漫画家であること、たびたび例えとしてスタートレックが出てくることも含めて、本当にアメリカのSF的なサブカルチャーからの引用が多い作品だ。メインカルチャーや歴史性が不毛になってしまった舞台で、サブカルチャーがかろうじて統合を保つきっかけとなる辺りは、ちょっと「木更津キャッツアイ」を連想させるような気もする。
◆純粋な子ども世代を守ろうとする大人世代
親子世代を書いていることが多い「HEROES/ヒーローズ」だが、強力な能力は子ども世代が持っていることが多いと同時に、能力を持っている子供が全て純粋に描かれていて、それを守らなければ未来がないと言及されるシーンが多いのが興味深い。
これって、「鉄人28号」とか「魔神ガロン」とかを契機とする日本のロボットもの典型的に見られる「純粋な子供たちだけがより強力な能力を使えても誤らない」というテーゼだろうと思う。でもこれって敗戦直後の日本で産まれた思想だよね。「大人は誤ってしまったけれども、子供たちはただしく能力を使ってくれるはず」というのがテーゼにあるから、スーパーロボット物はことどとく、父から息子にロボットが渡されるところからスタートするのだけれども、同じ構造が「HEROES/ヒーローズ」に見られるようだ。
911ってこんなにアメリカを傷つけていたのかなと思わされる構造だなぁと思う。内田樹の引用とか、「日本では力は他者から与えられる物」とかいう違いもあるので、このあたりまだまだ書き足りない。ちょっとまた後で直す。

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【あとで続きを書く、時間がネー】