ホイチョイ・プロダクションズが格好悪かった頃のエピソード

今年の小学館漫画賞において、ホイチョイ・プロダクションズの『気まぐれコンセプト』が審査員特別賞を受賞したが、その言葉が非常に面白かったのでここに全文掲載する。
ようするにホイチョイが格好悪かった頃の隠されたエピソードである。

審査員特別賞「気まぐれコンセプトホイチョイ・プロダクションズ
受賞の言葉

気まぐれコンセプト』の連載が始まる直前の1981年10月半ば、なんとしてもメジャーになりたかったボクらは、マンガの宣伝ビラを印刷して、ターゲットとなる業界人が住んでいそうな港区のマンションの郵便受けに片端から投函して回り、発売日の朝には、電通と博報堂の本社前で通勤途中の社員にビラを配り、それが、広告界の不敗を告発する組合活動と勘違いされて大騒ぎとなり、さらに、学校や会社の後輩を一同に集めてファンレターを一人3通ずつ書かせ、それを関東一円からタイミングをズラして編集部宛に投函させたら、ちょっとやり過ぎてしまい、普段は週に10通届けばいい方の読者からのお便りが、突然「気まコン」を褒めちぎるハガキばかりが毎週100通ずつ届き始めたものだから、白井編集長から呼びつけられ――
そんな不純で邪悪なマンガを、寛容な心で見守り続けてくださったスピリッツ編集部の皆様と広告業界の皆様、そして誰より読者の皆様に、ただただ感謝感謝。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

俺は学生時代の頃は、本当にホイチョイ・プロダクションズが大嫌いで、あーゆーオシャレ映画とか、マニュアルをいっそ憎んでいたと言っても過言ではないのだけれども、某大手広告代理店で仕事をするようになってから、ちょっと捉え方が変わってきた。
「これが格好いい、これが面白い」って自信を持って言える奴はカッコイイ。たとえ、それが別の生活圏から見るとダサく思えても。
ま、こーゆー視点から見えるようになってくると、ホイチョイのやっていることの一部がひどく面白く思えるようになってきた。
ことしになってホイチョイが出した本に

「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た!

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がある。これは日本にディズニーランドを誘致するために活躍した男たちの物語である。ここで著者の馬場氏は、あの卓越した分析力を発揮して、「こーいう男が格好良いのだ」というのを自信を持って書いていて、こういう「格好良さに関する確信」というのは、これまた非常に興味深い。
今は、確信を持って「これがカッコイイ」というのは難しいからね。こーういう兄貴分みたいなのがいるというのは幸せなことかもしれない。
でも、そういうホイチョイ・プロダクションズも有名になるまでには、無茶苦茶、格好悪いことをしてきたんだよというのが、この受賞の言葉から分かるわけで、こういうひたむきさを持っていたんだなぁというのは知識として持っていて良いと思う。
男の成熟、――それは子供の頃に遊戯の際に示したあの真剣さを再び見いだしたことを言う
ニーチェ『善悪の彼岸』より
ってなところで。
気まぐれコンセプト クロニクル

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しろねこラム・ニャンおたのしみ。 (おひさまのほん)

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