あけましておめでとうございます!と「SFが読みたい!」の原稿

ちょっと去年の大晦日から昨日まで非ネット環境に身をおいていたので、もう全然メールとかを見ない日々が続いておりました。いや両親にはGoogleの使い方を教えてましたけどね。「42」の件に関しては受ける受ける。
人生、宇宙、すべての答え - Wikipedia
でも還暦超えてコンピュータを使った経験がなくても、Googleのすごさはほんの1時間程度で分かったらしいから良かった良かった。
年末色々な事があったけれども興味を引かれたのは以下の二つ
Rauru Blog » Blog Archive » Wikipedia がカタールを国家まるごとブロック
ネタとして色々使えそうな感じ。戦時のネット環境とか。知性化シリーズなどを見ると、戦時であってもライブラリへのアクセス権というのは確保されているというのは面白い。あれは商業データベースと言うよりも、財団法人とか国際機関なのだろうな。
もうひとつはあいかわらず切れ味の鋭い惑星開発大賞か。
全面的に賛同は出来ないけれども、昨年の色々なコンテンツ情況を概観する上で非常に役に立つ。はやくドラマ・小説部門の方も書いてください(笑)
Yahoo!¥¸¥ª¥·¥Æ¥£¡¼¥º
その中で一番面白かったのは、
(4) 成熟をめぐって〜「エウレカセブン」はなぜ失敗したか
か。すでに田中芳樹藤田和日郎*1という世代においてすら、なかなか世の中に通用する男の子の成長物語を書けなくなっている中で、この指摘は重要だなぁと思った。
自意識過剰で頭の良い男の子御用達の「週刊少年サンデー」は去年の1年間で実売が100万部から80万部に落ちているんだぜ、ちょっと頭痛い。
地母神にしてクィーン=高橋留美子を押さえつけるのに、ジャック=あだち充じゃ足りないから、男性主神的でキングの藤田和日郎を導入したのが、ここ15年間のはずなのにこっちが崩れてどうするって感じでしょうか(苦笑)。この辺りは週刊少年ジャンプの現在などとも絡めてまた今度書く予定。
これは非常に面白いので多目に引用させてもらう。

(前略)
 オタク系文化に顕著な動きとして、ゼロ年代に入って本格的に「成長物語を回復しよう」という動きが目立つようになりました。エヴァンゲリオン・ショックの反動が本格的に出てきたんですね。
 『鋼の錬金術師』『エウレカセブン』『仮面ライダー響鬼(の前半)』あとちょっとマイナーだけど大西科学という空想科学テキストサイトからスピンアウトしたライトノベル『ジョン平とぼくと』あたりですね。「ハガレン」を除けばどれも商業的には苦戦していますし、それほど大きな流れにはなっていない。でも、どの作品も30代中盤の第二世代オタクの男性を中心にコアなファンが支持しています(もちろん「ハガレン」は例外)。
 僕はこのライン。「エウレカ」と「響鬼」は失敗していて、「ハガレン」と「ジョン平」は成功していると考えています。
 この前者と後者の違いはなんでしょうか?

 それは言ってみれば「親が導かないと子どもは成長できない」という思想と、「親はなくとも子は育つ」という思想の違いです。「エウレカ」や「響鬼」は主人公の少年を導く「正しい大人」が出てきて、「正しい思想」を教え込もうとする。
 これは明らかに古い成長モデルなんですね。何が正しいかはハッキリしていて、大人はそれを知っていて、子どもはだまってそれについていけばいい。
 でも、95年*2に全面化した世の中の変化は、こういうモデルをほとんど通用させなくしてしまった。
 大人たちだって「何が正しいか」知っているわけではなくて、子どもたちを導く余裕なんかないのが今の世の中です。その結果90年代後半は「大人たちが導いてくれないから何もしなくていい、成長しなくていい」という頭の悪い発想が蔓延する(セカイ系)のですが、それはそれで置いておいて、世の中が変化しているのに「子どもは大人について来い」なんて言われてもまるで説得力がない。
 この2作に関しては、その発想が善意にあふれていて真面目だからこそ、正直、頭を抱えました。これでは「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝とあまり変わりません。

 その点「ハガレン」や「ジョン平」で大人たちは子どもを同等の存在として扱おうとします。マスタング大佐なんかエドと同じくらい迷っていますよね(笑)、結構いい歳なのに。
 そして、これらの作品に出てくる大人たちはあくまで自分たちで考えさせようとします。あくまで子どもたちの試行錯誤を可能にする「環境」を整えるだけで、思想の内実そのものは伝導しようとしないんです。つまり、「親はなくとも子は育つ」という発想に貫かれているんですね。僕がどちらに共感するのか、もはや説明する必要はないでしょう。この後者の発想はゼロ年代の財産だと考えています。

ちぃ、自分より10歳年下の人間にこんな原稿を書かれるとめげるなぁ……。
とマスタング大佐の気分です、ハイ。
ま、とりあえず今年の原稿仕事始めは、早川書房「SFが読みたい」のライトノベル業界動向になりそうな予感。昨年末に色々と同行があったので、それに関して少し書くことになりそう。一昨年の年末に書いた業界動向で予測した「雑誌の創刊ラッシュ」というのは結局、一年遅れで今年に流れ込みそうだねという事に気が付いた。
ことしは男性作家に頑張って欲しいなぁと思っている次第です。
さてそんな感じで今年もよろしく。

*1:からくりサーカスが完結したのは吉としても、もう週刊サンデーで辛いし

*2:引用者註:オウムの地下鉄サリン事件新世紀エヴァンゲリオン阪神大震災の年