「教育」と「親子関係」と「教師への非難」が、青春小説に与える影響

プレジデントファミリーが絶好調だ。今まではこうした男性向けビジネスマンの育児関連雑誌といえば、NEWSWEEKの別冊の独壇場だったのだけれども、それを崩しつつある。こんな本がキヨスクで売られているのだから、おそろしい。北朝鮮問題を除けば、新首相の緊急課題も「教育改革」と言っているほどだから、おそらくこの分野は危機的状況なのだろう。
「ゆとり教育」が実施されたことの悪影響がじわじわと浸透してきたという側面もあるのだろうが、むしろ親子関係のアンバランスさに関して、父親&母親世代がようやく気が付いて、それを様々な形で修復しようとしている雑多な行動が非常に思い白いなと思ってみている。
前々からそういった風潮があったのだけれども、それが身も蓋もなく吹き出してきたのは、昨年辺りからだろうか?
「キレる子供」という表現自体は、すごく前々からあったのだけれども、親が子を敵対視し、それを強権で教育し直さなければならないという形で噴出しはじめたのは、奈良放火殺人事件辺りからのような気がする。
その前からコミック&ドラマとして「ドラゴン桜」「女王の教室」あたりで、やや誇張しながら身も蓋もなく書かれていたことが、プレジデントファミリーの様に経済誌領域から語られるようになるとは思わなかった。
まだ実施前に「ゆとり教育」が推進されていた90年代後半って、「子供にはなるべく『身も蓋もない現実は見せないようにしよう』という風潮」があったように思える。多分、これはバブル崩壊という時代的な雰囲気とも絡んでいるのだろう。あとこの時期にはオーソン・スコット・カードの「エンダーのゲーム」を前史として、「新世紀エヴァンゲリオン」「オウム事件」の様な形で、「子供の無垢さを力とするために虚偽を教える」→「それによって子供がトラウマ」を受けるというストーリーがやたらと多かった。
オーソン・スコット・カードを再読する - さて次の企画は
と同時に少女小説の領域では「子供が家庭を捨てて、同じ疵を持った仲間と集まり疑似家族を作る」というのが大量に生産されていたというのも聞いている。
それが今では「身も蓋もない現実を無理矢理子供に飲み込ませる」風潮が花盛りで、ビックリしてしまうのだけどもこれまたある種の揺り戻しなのだろう。
そんな中で亀田親子とハンカチ王子が、正邪としてワイドショーにおいて扱われてしまうというのも注目しているところである。
雑誌『プレジデントファミリー』の公式サイト(プレジデント社)
しかし、だからといって教育の失敗の原因を、すべて教師に帰そうというのは、無茶苦茶。
根本的には、世代間のコミュニケーションが上手くいっていないことが原因なのだけれども、それを直視できないとプロの職業としての教師を責めるようになっている気がする。勿論、ほっとかれたままになっていた教育制度改革がもっともマズイのは言うまでもないが。
プレジデントファミリーのネットに掲載されているアンケート項目なんて、正直ちょっと怖い。
この辺りから、また新しい教師ドラマや青春小説が出てきそうな気がするけど、あまり介入のきつい先生というのもなぁ……。
大体において、「下記のような評価シートを記入できるぐらいの情報を自分の子供から得られる両親」なら、もはや担任のやる事なんて非常に少ないと思う。

わが子の担任評価シート
1. 子供を伸ばすことを最優先課題として考えられるか。
2. 早寝・早起き・朝ご飯を家庭に強制できるか。
3. 何か得意分野を持っているか。
4. 教師になった後も学び続けられるか。
5. カリキュラムをよく研究し、自分なりに活用できるか。
6. 個々の子供の性格や学力構造を理解しているか。
7. できない子の指導にこだわるか。
8. 教育を巡る情報リテラシーがあるか。
9. 教育のプロだという自覚があるか。
10. 社会や経済に関する幅広い視野があるか。
11. 世の中に対して当たり前の興味や好奇心があるか。
12. 情報を独自の視点で編集し、わかりやすく提示できるか。
13. 地域社会の知恵やエネルギーを、学校に取り入れる姿勢があるか。
14. 教科の知識とともに、それを伝えるための技芸があるか。
15. メリハリやテンポの利いた話し方ができるか。
16. 大人ならではの「凄み」を、何か一つでも子供に提示できるか。
17. 保護者や地域社会と「信頼と共感」の関係を結べるか。
18. 部活動や課外授業を通じ、生徒と多様な人間関係を結べるか。
19. わからないことに正直か。
20. 自ら学ぶフットワークがあるか。
21. 社会的な常識と、教育公務員としての自覚・責任をもっているか。
22. 生きていくうえでの自分なりの座標軸を持っているか。
23. 子供の内面の気持ちや感情を敏感に感受できるか。
24. 子供と心のつながりを深める様々な方法を身につけているか。
25. 集団全体の動きと同時に、一人一人の状況を常に把握できるか。
26. 集団に対し的確に指示し、規律正しく活動させることができるか。
27. 教材開発の意欲とアイデアを常にもっているか。
28. 教科指導や活動についての知識、技能と探求心をもっているか。
29. 他者の実践や教育論に耳を傾ける姿勢をもっているか。
30. 問題意識をもち、現状を変革しようという強い意志があるか。