常に次回作がもっとも面白いと言われる小川一水の初単行本「天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)」を読了。
後書きから類推されるように、本作では小川一水がSF的な超技術ガジェットをほとんど使わずに、キャラクターに焦点を当てて描くという今までにない書き方をしている。
これは冒険小説としても良くできていた短篇集『老ヴォールの惑星』のなかの『漂った男』*1をより深化させようという意図であるのは明白だ。
宇宙ステーションで起こった事故で、生き残ろうと努力する人々を描くというある種のパニック・サバイバル小説である。その意味でSF要素は場所が宇宙ステーションであると言うだけだ。
ただ急いで書いたのが見えてしまう故に、小説としての構成は枠組みとしてキチッと作られているが、意図するレベルにまで描写が高まっているかというとまだ発展途上の可不可のない習作の域を脱しえていないかもしれない。
ただ新しい作風に挑戦しているという意味で「回転翼の天使―ジュエルボックス・ナビゲイター (ハルキ文庫)」と同じように一つのメルクマールとして重要であるように思える。
「冒険小説的な枠組みの模索」と「キャラクターの内面と行動」を描こうとしていると言う新境地に、もう少しケレン味とベタでもいいから強い描写があるとよりよくなると思う。
そういう意味でただ面白い読み方を一つ発見した。
一度「天涯の砦」を読み終えた後に、TVドラマ「マイ★ボス マイ★ヒーロー」のエンディングテーマであるTOKIOの「宙船(そらふね)」をガンガンに流しながら再読すると、無茶苦茶にシーンが思い浮かんでハマルのである。
「宙船(そらふね)」PV
http://www.youtube.com/watch?v=kF9QDqm7wpc
TOKIOが長瀬智也が歌う「宙船(そらふね)」の作詞作曲は、「地上の星」の中島みゆきである。2番の歌詞を聞くと、ここで歌われている「宙船(そらふね)」が「壊れた宇宙船」であることが分かる(妄想)。そしてその歌詞の各シーンが、イメージ的に本作に非常に重なるところが多かったりする。
「なるほど、中島みゆき分*2って、ある種の職業モノに添加するロマンチシズムとして欠かせないな」と思わずにはいられない。
雨に濡れて歌う長瀬が苦手な人は、映像は宇宙船サジタリウスのEDテーマ「夢光年」を想起すれば、これまた良い感じなると思う。
宇宙船サジタリウスのEDテーマ「夢光年」
http://www.youtube.com/watch?v=zcBQLZkm6aE
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