次世代の少年モノのストーリー展開の解題

以前、70〜80年代的なD.T.ストーリーに関して、このサイト《Yahoo!¥¸¥ª¥·¥Æ¥£¡¼¥º》と言うの参考にして、それを90年代以降のポストモダンに対応したD.Tストーリーへと書き換えたいなぁと思ってた。
http://www.geocities.jp/wakusei2nd/gineiden.html
でも代替案を出さないと……と思っていたら、今日、「鋼の錬金術師 12巻」を見ていて急にわかったので、備忘録としてまとめておく。
ちょっと抜け落ちている部分が凄く多いので、コレをベースに同人誌の原稿を書く予定。
抜けているのはしょうがないんだよ、死ぬほど忙しいんだから!

《70年代〜80年代的D.T.ストーリー:SWとガンダムと銀英伝
●まず延々と歴史設定を語るOPや第一章
●市民革命や平等を求めた戦争が、争いごとの発端。
●主人公が先天的な天才で童貞
●有能・美人な女性の積極的アプローチ
●ヤリチン不良キャラが類型的
●三角関係が中途半端
●次の直接的系列作の主要人物がダークサイドor悪漢を気取るヤリチン

これが「エンダーのゲーム」「新世紀エヴァンゲリオン」以降に下記のようになっていった。

《90年代的D.T.ストーリー:エンダーのゲーム、Ζガンダム新世紀エヴァンゲリオン
●詳細な歴史・設定があるんだけどわざとそれを語らない
エウーゴって何? NERVってなんなんだよ!)
●国家間戦争ではなく、テロ・正体不明の敵が相手。実は敵とは父的なものであり、母を滅ぼそうとする存在なのだが、欺瞞情報しか子供に伝えない。そのため主人公には、敵は無機質な不明な「セカイ」そのものと見えるのだが、その「セカイ」の正体は最後まで明かされない。
●主人公は先天的な天才で童貞、深刻なトラウマ(もしくは人格障害・多重人格・妄想)を抱えている
●クール系人形美少女とS系ツンデレ美少女にモテモテ
●ヤリチン不良の兄貴分・父親キャラが出てくるが、どうしようもない駄目人間で、ストーリー末期に死亡・失踪する
●素肌がヒリヒリしてきて、ヒロインの一人がリストカットをするくらいの緊張した三角関係
●次の直接的系列の主要人物が、薄幸で生命力が薄そうな純愛キャラ

で、それをどのように突破するかというのを、今色んな感じで実験している。それをまとめると以下のような感じ。

《おそらく次世代のD.T.ストーリー》
●歴史・世界設定は、ストーリー進展に従って増えてくる(開始直後は考えていない)
●セカイを一新させようとする組織が敵。そしてその敵の正体は、父親・もしくは造物主である。目的も姿もストーリー初期のウチに読者に提示される。ただしストーリー内の主人公や登場人物には、情報が分散されているために部分的にしか判らない。すべてを見通せる読者は70%〜80%程度にラスボスの姿・目的を類推することができる。
●主人公は「白」と「黒」の少年が二人。主人公それぞれは先天的な天才で、深刻なトラウマを抱えているが、その主体を二つに分割し、ストーリーをツーマンセルで引っ張ることにより、90年代以降の「引き籠もり」傾向を回避しようとする。「白」は「黒」より未熟で弱いがポリティカルコレクトネス的に正しく少年モノの王道を進む。「黒」は「白」より強いが、殺人・変態・サイコ衝動を含む自身の汚れを知るがゆえに「白」にコンプレックスを抱き、「白」を助けたいと思っている。
●「白」は童貞。また決まったパートナーが存在しないか、あるいはストーリー初期から存在。しかし「黒」は基本的に童貞ではなく女性にモテモテでハーレム状態だが、満たされない。
●ヤリチン不良キャラが、主人公の一方「黒」として登場。白黒の弁証法的な合一を目指すのが、一つのストーリーの主目的でもある。
●三角関係はストーリーに内に普通に存在し、ストーリー内の脇役も離婚・バツイチ・非モテが偏在する。
●父・師匠的な存在との、伝承・技の継承は「白」に対してなされる。「黒」は、自身が継承者でないことを知っているが、伝承・継承の中に置いて果たされるべき役割を無意識に知っている。

ああ、少年性の維持するために、バディムービーの様に「白」「黒」の少年を設定しているわけか。こうすればバトルヒロインに前面に立ってもらわなくてすむしな。
あとセカイ設定をまったく知らせないという手法は、どんな作家も1回しかできない手法であるので、「読者には明示するが、登場キャラクターには情報を分散させることで、判らせない」というのがポイントか?
鋼の錬金術師」「デスノート」「Hunter×Hunter」「導きの星」「TV版野ブタ。をプロデュース」「武装錬金」「道士郎でござる」「結界師」とか、要するに「エンダーのゲーム」命題以降に自覚的になるとこうなっていくみたい。
当然の事ながら、頭の良い作者であればあるほど、「白」「黒」の関係性を色々と工夫していっている。突き抜けている作品はやはり「デスノート」「鋼の錬金術師」「Hunter×Hunter」か、デスノートは「白」であるLに変態性を付与し、「苦行なき継承はよろしくない」というものをデスノート本体で暗示している。変態を書くのが大好きの富樫はやっぱりスゴイや「Hunter×Hunter」のネジレ具合はオカシイ。90年代的なキーワード《不殺》を破りまくり。その意味では「鋼の錬金術師」は関係性が見やすい。これを書くのが女性というのが一番ねじくれている所ではある(笑)
90年代に自覚してしまった、少年性の中にある《黒》をかき消してしまうことは、もはや無理と言うことを飲み込んだ上で、《白》を維持して、文化的な継承をどのように果たしていくかみたいな話になるのかな?
まだ抜けが多いので、これは同人誌などにおいて補足予定。