ツンデレの勝利条件から考える、ミリタリツンデレと不良ツンデレ:中編の後半

忙しすぎて間が空いてしまった。
頑張って書いていこう!

◆膨大なフォロアーを産んだ、不良ツンデレ・中森明菜

まず前提としてあるのは、文化系オタク少年は基本的に不良が嫌いだ。黒童貞度合いが強くなるとまた違うかもしれないが、基本的に暴力苦手だし。変に格闘技を好きになるとホーリーランド化するし(笑)
基本的に知識の方が先行するから、単なる体育会系よりもいっそう、DQNや暴走族も嫌い。ある意味で体育会系よりも忌み嫌っていると言っても過言ではない。だから不良ツンデレにまったく魅力を感じないタイプもいるわけで、オイラの方も比較的そうだ。
そういったカテゴライズの中で、文化系オタク少年に愛された典型の一つが、原田知世と言えるだろう。知的そうな感じを持っているが、人形的で少し血が通っていない体温の低そうな感じ。
不良は基本的に文化系オタク少年には手に負えない部分があるのだけれども、それを押してオタク少年に愛され、その結果、漫画やアニメを含めた多数のフォロアーを生んだアイドルがいる。それが中森明菜である。
彼女が後にセーラー戦士までも続く不良ツンデレのロールモデルを作ったのである。

中森明菜のwikiデータ
中森明菜 - Wikipediaより抽出。
デビューはテレビ番組『スター誕生!』で史上最高得点で合格。第2弾シングル『少女A』がヒットとなる。さらに『セカンド・ラブ』が年を代表する大ヒットとなった。
1985年(昭和60年)に『ミ・アモーレ〔Meu amor e…〕』、1986年(昭和61)に『DESIRE』で2年連続日本レコード大賞を受賞する。
オリコン週間シングルチャートで21作の首位を獲得し、2005年に浜崎あゆみに抜かれたものの、女性歌手では歴代3位の記録(1位は松田聖子の25作)。またテレビ番組『ザ・ベストテン』では69週で1位となり、番組史上最多。
数年来交際していた近藤真彦との破局騒動で、1989年7月に自殺未遂事件を起こし、約1年間歌手休業する。
現在も独身だが、非常に家庭的な性格である。『ザ・ベストテン』で披露された洗濯物の干し方講座やアイドル同士(小泉今日子、工藤静香ほか)での買い物競争に、その実践力を見て取れる。また、結婚願望も以前はかなり強かったことがうかがえる。
その存在感から、彼女を尊敬したり、共感を覚える芸能人も非常に多い。例えば、浜崎あゆみは自身の番組「ayu ready?」で中森と共演。トークなどから先輩・明菜への入れ込み度が見て取れた。昔から歌いこんでいた『少女A』などのセッションは、双方ともに楽しそうで好評を博している。

芸能界でのポジショニング的なものを書くのであるならば、おそらくは山口百恵ロールモデルを、結果的に松田聖子と分け合ったのが、中森明菜といえるだろうか。
80年代に置いては、まだアイドルオタクは、ジャンルとして他のオタクと明確に分離していなかったため、この年代ではコミックやアニメからも現実のアイドルからインスパイヤ(笑)されたキャラクターが非常に多かった。
そして中森明菜から産まれたコミックキャラクターとしてもっとも有名なキャラクターといえば、きまぐれオレンジ☆ロードの鮎川まどかにとどめを刺すだろう。
せんだって永年の闘病生活から復帰したというまつもと泉の最大のヒット作だ。

きまぐれオレンジ☆ロードのあらすじ
1984年から約3年にわたり週刊少年ジャンプに連載されたラブコメディ。
主人公の春日恭介は、中3の時、父親と双子の妹まなみ・くるみと転校してくる。家族全員が超能力者であるため、その秘密を隠してやってきたのだ。
恭介はふとしたきっかけで、美少女・鮎川まどかと知り合う。ほとんど一目惚れをするのだが、実はまどかはその町では名の知れたツッパリだった。
ところが恭介はまどかの妹分である後輩・檜山ひかるに惚れられてしまう。まどかも恭介を憎からず思っているのだが、優柔不断な恭介は三角関係に悩むのであった……。
まぁ、現在の位置づけで言うのであれば「いちご100%」である(笑)
ちなみにコミック版の最終回は下記のような感じ
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これが、80年代の週刊少年ジャンプにおいて異常な大ヒットを飛ばした。
それまでは文化系のオクテな少年にはツッパリの不良少女というのは、ちょっと手のでない存在であるのだが、それをまつもと泉は、中森明菜のテイストを上手い具合に取り込んだ。「彼女が隠し持っている純粋さは僕にしかわからない」という風に調理したのだ。その具合が絶妙だったのかもしれない。
また87年からのアニメ化を、キャラクターデザイン高田明美、アニメ製作ぴえろが担当したのも大きい。「魔法少女モノ」「うる星やつら」というオタク文脈で、このツッパリ美少女がヒロインというストーリーを、うまくオブラートにくるんで文化系オタク少年に受け入れやすいモノにしたのだ。
2chを見れば分かるが、基本的に文化系オタクは暴走族も不良も苦手である。自分たちの属さないコミュニティであるどころか、DQNとして忌み嫌い、悪口雑言の限りを尽くしているといってもいい。
性的にオクテな部分もあるなかで、ヤンキーコミュニティのように女性を取り込むのは、まず性格的に合わないし、特に白童貞にとってはPC的にいっても手が出ない領域だ。
だからちょっとヤンキー入ったヒロインというキャラは、なかなか少年向けのヒット漫画キャラクターにはでてこなかった。ちょっと間違うと車田正美の「すけ番あらし」や、「リングにかけろ」の高嶺菊になっちゃう(苦笑)。ボクシングの天才・高嶺菊に惚れちゃうのはやっぱり剣崎くらいに雄度が強くないといけないけど、そこまで入れ込める文化系オタク読者は当時はあまりいなかった。
だからこそ、ヤンキー好きの車田正美であっても必ず「姫」役の可憐な女の子は出すわけだ……。ほかには漫画に出てくる不良っぽい女の子というと、1976年に連載開始された「スケバン刑事」になるんだけど、よーするにみんなスケバンじゃん! 当時、萌えって言葉はなかったけれど、オクテの文化系少年は、かりにスケバンを恰好イイと思えたとしても、ちょっとこれは萌えにくい。
そうした状況下で中森明菜が登場したわけだ。

  1. 影があって不良っぽいく、男子にツレないけれど可愛い
  2. 汚れても汚しきれない清純な姫っぽさを持っている
  3. オタク少年では抗しきれない、学歴社会への対抗者

中森明菜は上記のような新しいロールモデルを提供したところがすごいのである。
コレによってようやくオタク少年が、不良ツンデレ少女を可愛いと思えるような条件が整ったのだ。
後にスケバン刑事も、斉藤由貴というキャスティングを経て、実写ドラマ化されていくのであるが、そうした不良役にアイドルを使っても、オタク少年に受け入れられていけるような素地を作ったのが、中森明菜であることは忘れてはならない。
それと80年代にこうした不良ツッパリへの強い憧れが、オタク男子からも出てきたという背後には、団塊の世代ジュニアが非常に多くなったことによって、この時期がもっとも受験戦争と管理教育が生徒を締め付けたことも忘れてはならない。そうした学校教育の中において、既存のルールに従わずに猫みたいに生きている不良少女というのは、ちょっと知的なオタク少年からも憧れの存在となり得たのである。
面白いことにこのスケバン刑事の「闘う少女」という役付けは、その後も一つの伏流として残り続けて、「セーラー服反逆同盟」や「花のあすか組」へとも繋がっていく。
そして不良少女の学歴社会への対抗者・反逆者というポジションは、体制への反逆・革命へとも容易に繋がりやすかった。
「人類なんてみんな駄目だぁ〜、ハルマゲドンだ〜」と言っていた平井和正が、きまぐれオレンジ☆ロードにハマってしまった時に、SF業界界隈では「いったいなにが起こったんだ!」と驚愕が渦巻いたのだが、なんてことはない。鮎川まどか=不良少女を「革命の女神」「体制反逆者」みたいな感じで読み解いてしまうと、虎四みたいに読み解けちゃうわけだ。もー平井和正笠井潔もイチコロの、ちょっと社会派のオタク少年がはまりやすい《革命ヒロイン》というキャラクター造形ができちゃうのである。
こんな感じでチューニングをしていくと、《革命を志向する体制反逆者》にして、《母性をも象徴する》ような、ツンデレ・キャラクターが出来上がるわけだ。
それが、最終的には1990年代に人気を博した「美少女戦士セーラームーン」「少女革命ウテナ」へと結実していくことは重要である。
では、その後にどんどんと付け加えられていった不良ツンデレの魅力を箇条書きにして述べていってみよう。

◆不良ツンデレの8大条件

  1. 影があって不良っぽく、男子にツレない(=自立している)けれど可愛い
  2. 汚れても汚しきれない清純な姫っぽさを持っている
  3. 女友達も少なくて、コミュニティからは独立している
  4. オタク少年では抗しきれない、体制や学歴社会への対抗・反逆者である
  5. 人前では見せない彼女の本当の優しさは、ボクだけが知っている
  6. 実は頭もよく家庭的で、きわめて結婚願望が大きい
  7. 不良になったのは止むにやまれぬ家庭環境の荒廃がある
  8. 本当に本気を出した時は、男であるボクには敵わない

まぁ、だいたいこんな感じであろうか。
やっぱり、最後の条件などを見ても、都合がよすぎるけれども、バリバリの不良で、最終的にヒロインとして主人公とくっつくためには、連れ合いとして家庭を成すための案件を満たさなければならないわけで、となるとどうしてもこうなっちゃうよね。
中森明菜ロールモデルがヒットしてから以降、とかく不良、反体制で売り出そうというアイドルも数が増えた。
スケバン刑事の各ヒロイン、斉藤由貴南野陽子、浅香唯、大西結花中村由真はとりあえず役柄として不良として売り出すこともOKになった訳だし、革命ヒロインという意味では、「ぼくたちの七日間戦争」の宮沢りえもちょっと面白い。小高恵美網浜直子とかその辺の系統と言えなくもない。
美少女戦士セーラームーンセーラー戦士の多くが、先の8大条件をかなりこねくり回しつつも満たしていることは要注目である。
思った以上に書くのに時間がかかった。
ただ、中森明菜を論じておかないと、どうしても浜崎あゆみが出てこないのでまずかったんだよね。実は次の世代のツンデレヒロインにはどうしても浜崎あゆみチックなロールモデルも絡んでくるとオイラは睨んでいるので。
……というところで、思ったよりも尾を引いてしまったが「ツンデレヒロインの勝利条件」の中編の後半が終わり。
ちょっと間が空くかもしれないけれども、最後に後篇を書く。