日本文化好きな海外の女性漫画家・イラストレーター

昨日、紹介したカナダのイラストレーター・スヴェトラーナの他に最近気になっている海外の日本漫画家志望の人材としては、韓国版ニュータイプでイラスト講座を連載しているtivさんなどがいる。
http://tiv.pe.kr/
女性らしい細やかな背景描線や色彩感覚などが好ましい。技術的とセンスで磨かなければならない部分が多いが、潜在的な才能を感じさせる。スクールランブルげんしけんクロノクルセイドとかを達者に描いているなぁ。
面白いことにこの辺りの韓国系イラストレーターは、同じ会社や同じ学校サークルに属していた経歴がある。
これは、通常ならば2年間つかねばならない徴兵が、コンピュータ系のIT企業に所属していると短くすませられる特典あったため、ほぼ全員が同一の会社に属し、そこから学友繋がりで交流のネットワークが構築されていったためと言われている。
その人的な繋がりが、韓国国内で拡大するインターネット網の進捗とも重なり合って、偶発的にも日本における「トキワ荘」的な状態を形成してしまったらしい。そのためこのtivさんの世代−−1979年〜1977年生まれ−−に上手いイラストレーターが集中して現れている。手塚治虫を中心としたトキワ荘状態と違うというのであれば、オタク第一世代のゼネプロ状態といってもいいかもしれない。逆にこの世代をはずしたり、また徴兵特別免除制度が韓国・北朝鮮の緊張度合いが高まった5年ほど前に廃止されてからの新世代では、途端に上手い人が減るという情況もある。面白い。−−国の政策の小さな変更がクリエイター業界にも多大な影響を及ぼす例として興味深いでしょ。*1
ちなみに彼らに大きな影響を与えた日本イラストレーターとしては、西村キヌを代表とするカプコン系イラストレーターと村田蓮爾があげられる。これは90年代の全盛期にアニメ・コミックの海賊版よりも先端的な格闘ゲーム「ストリートファイターⅡ」「豪血寺」が韓国に大量に入っていったからだ。
そのためか、韓国の業界人は、日本でのイラスト・コミック業界の動向に関しても異様に詳しい。ほとんど瞬時に伝わる。「西村キヌがろくなイラストを描いてないのはコレコレだから」なんて話題で盛りあがっているらしいのだから侮れない(笑)
ちなみにアニメならばAICの「天地無用」バブルあたりに影響を受けた人間が多いようだ。中国を中心としたアジア文化圏における「天地無用」の影響力は本当に絶大なのでこれまた侮れない。
よく感じることだが、都市部に住むヤングアダルト層の生活環境は、世界は勿論、アジア圏においては、かなりの領域において共通化しているワケだ。もっともそれが直ちにコンフリクトしているアジア圏の政治環境に影響を与えるものではないのは言うまでもないし、コンフリクト状態が続いた方が良い場合もあるので、一概には言えない。
とはいえ、こういった形で日本文化に共感を持つ層を増やすための文化輸出は、非常に意義あることなので、注力していった方が良いと思われる。

*1:だからオタク産業育成とか言わずに「ゲーム会社とアニメ会社・マンガ出版社・クリエイターは会社立ち上げ5年間は無税」とかいう政策をぶちあげれば、ちょっと息切れ気味の業界にも簡単に活力が戻るかな。建設業界とか銀行にやっているくらいなんだから。でもそんなロビー活動ができる人材はこの業界にいないので無理ですが