史上最強のオタク・グラビアアイドル、黒田美礼をキミは知っているか? 前編

なんか猛烈に忙しくて、店屋ものばかり食べているんですが……家に帰って家庭料理が食べたい! 吉祥寺のホルモン屋でレバ刺し食べたい!
さて、オタクvsサブカル本で色々メールもらったりしてその返事も書かねばならないのだけれども、2005-08-09 - エロ本編集者の憂鬱と希望のエントリがとにかく気になってしまったので黒田美礼についてちょっと書いてみようと思う。実は数少ない情報から総合するに彼女はかなりのオタクで、考えてみるとちょっと早すぎたグラビアアイドルだったのかもしれないなぁと思う。

2005-08-09 - エロ本編集者の憂鬱と希望より
『SPA!』で最初に「質、量ともに過去最高のレベルを誇るグラビア界をチェック」という嘘ばっかりの見出しでグラビア・ツウとして登場するライター・オーリー氏が語るように、まずグラビアの世界には黒田美礼青木裕子という二大巨頭が存在している。彼女たちになんらかの思いを抱いていない人とは、基本的にグラビアの話が出来ない、というほどまでに彼女たちの存在がその後のグラビアの歴史を規定したといってもいいだろう。文学の世界にW村上という言葉があり、80年代以降の文学シーンを引っ張ってきたように、黒田美礼青木裕子のW巨乳が90年代以降のグラビアシーンを形作ってきた。彼女たちが活躍を始めた96年当時から、雪崩を打ったように各青年漫画誌、少年漫画誌が水着グラビアを表紙・巻頭カラーで使い始めた。それ以前にも雛形あきこという貢献者がいたわけだが、黒田・青木は圧倒的な存在感を持っていた。

この辺りは割と常識なので軽く流してみると、アイドル史上では82年の「花の82年組」と85年の「夕やけニャンニャン」放映開始から1年ぐらいが、<80年代アイドルの頂点>と言われるが、その後、ほぼ5年ぐらいにわたってアイドル冬の時代と呼ばれる、新人アイドル不作の時代が続く。
これは現役の高校生アイドルユニット「おニャン子クラブ」が、文化祭レベルそのままでTV番組に出てしまって人気になってしまったことによる価値レベルの崩壊が原因と言われる。その後、何人か新人がデビューしたものの、このレベルで一般を巻き込んで人気を席巻することはなくなってしまう。
何よりもアイドルに熱中するボリュームゾーンであるところの、男子中高生に人気が出ないのだからしょうがない。歌も売れなければ、アイドルを表紙にした本も売れないのだからブームの起きようはずもない。
80年代後半から90年代前半にかけては、自分で楽曲を作れないアイドルは価値がないとされ、シンガーソングライターの方が人気があったような思い出がある。

雛形あきこイエローキャブが変えたアイドルの概念

そのアイドル冬の時代を決定的に終わりにしたのは雛形あきこだと言われる*1。現在はサンズエンタテインメントとなった野田社長とのデビュー時の逸話に関しては、多く語られているので書くまでもない(確かマンガにもなったような気がする)。
まず積極的な水着路線で雑誌の紙面露出より知名度を上げてから、バラエティタレント・女優として売り出していくというイエローキャブの路線を、ほぼ一人で作り上げてしまったのが、雛形あきこだった。それはちょうどエヴァブームともきわめて近い時期だった。
そう95年前後は第三次アニメブームとグラビアアイドルブームが、表裏一体となって以後のカルチャーシーンを決定的に変えてしまったのである。オタクvsサブカル!では、AVは補足していてもグラビアアイドルが抜けているのはちょっと残念。94年には広末涼子のクレアラシルぴかぴかフェイスコンテストでのグランプリ受賞もあり、これまた決定的にアイドルシーンを変えた。
雛形あきこが、94年にフジテレビのビジュアルクイーンに選出された前後のグラビア露出は、まさに異常といってよかった。文化系オタク少年御用達の週刊少年サンデーからオヤジ雑誌の週刊大衆まで、ありとあらゆるメディアに雛形あきこが登場して、しかもそのことごとくが中学生からサラリーマンにまで売れまくっていた。
グラビアアイドルが一般化してしまった現在では分からないだろうが、かつては新人女優を水着グラビアで売り出すという芸能戦略は、クラリオンガール*2を頂点として、資生堂・カネボウといった女性向け化粧品の夏向けキャンペーンガールが主流だったのだ*3。水着キャンペーンって、今となっては男子中高生向けの知名度アップ戦略に見えるが、イエローキャブ登場までは、そんな戦略は存在しなかったのだ。
原型として、イエローキャブ最初の所属タレント・堀江しのぶ、そしてクラリオンガール・かとうれいこは存在したものの、現在ある「グラビアアイドル」というカテゴリーそのものを産みだしたのが雛型あきこだったというのは、いくら強調しても足りない出来事ではある。
なんか黒田美礼のことを書こうと思っていたのに、全然、そこまで到達できていない。
悔しいので写真だけ貼って続きまた明日。
【追記】
ヒナに胸キュン!雛形あきこ物語:a Black Leaf
雛形あきこ人気がいかにすさまじかったかと言うことは、週刊少年サンデーに掲載された「ヒナに胸キュン!」というコミックで証明できる。このマンガを覚えている人もいるかもしれない。とにかくイエローキャブ社長の野田義治が強烈すぎて忘れたくても忘れられない(苦笑)
当時、ライバル誌のマガジンでは「ヴァーチャファイターを作った男たち」みたいな漫画が載っていたのだが、それと同じようなことを雛形あきこを題材に、マンガ研究会御用達のサンデーがやってしまったのだから恐ろしい。
ちなみにそのマンガの作画を担当したのは、橋口隆志。現在「焼きたて!!ジャぱん」を好評連載中の「橋口たかし」だったりするのだから二度びっくりである。この当時は橋口先生の絵ってマガジン臭が漂っていた。ところがちょうどこの「ヒナに胸キュン」の次回作「ウインドミル」では、惣流・アスカ・ラングレーによく似たライバルキャラが登場し、「ああ、橋口先生は新世紀エヴァンゲリオンのアスカにハマったんだな」ということが丸わかりであるのが楽しい。
このあたりの連動は結構重要で、95年はオタクはエヴァ・オウムにはまっていたけれど、健康な青少年は雛形を嚆矢とするグラビアアイドルにはまっていたんだよということを覚えておくといいかもしれない。
【参考】
グラビアアイドル - Wikipedia

*1:アイドル冬の時代を終わりにしたのは広末涼子との説もある。この辺りは各々の主観かもしれないが、おそらく影響力はそれぞれ半々づつとみるのがもっとも正確だろう。時期的には雛形あきこのほうがやや先行しているので、ここでは雛形あきこ説をとる。

*2:1975年のアグネス・ラムが最も有名

*3:例外的にアルコール飲料もあった