ビッグコミックスペリオールについて一気に語る

今週のイブニングも非常に面白いのだが、最近、非常に心引かれているのがスペリオールだ。
あ、画像は80年代を代表する美少女ジェニファー・コネリーを「フェノミナ」から。アメリカでは全然ヒットしなかった「ラビリンス/魔王の迷宮」は、ちょうどファンタジーブームだった日本でコンプティークのプッシュもあって大ヒット(笑)。それでアメリカから不思議がられたのも良い思い出だ。それが鈴木光司原作の「DARK WATER」で主演するのだから、角川書店の80年代の遺産の大きさがしのばれる(誇張しすぎです)
さて、スペリオール。なんていうか……「中二病を自覚しつつ克服してる」とゆ〜非常にねじくれた感覚で読めるのが楽しい。ある程度の社会的な成功を得た元オタクが、余裕を持ちつつ<舌をちょろり>と出しながら描いている感じがする。同じようなコンセプトで編集している感じのイブニングがドンドン説教臭くなるのとは対照的だ。……いやイブニングも面白いのだけれども。特に今回の「社長が社内カレンダーのデザインが気に入らなかったので金ばらまいて作り直し」というきわどいネタを使っている「ヤング島耕作」は笑えね〜(苦笑)。まぁバブル期の話だしな。

「マネーの拳」三田紀房

モーニングで「ドラゴン桜」連載の三田紀房が<ComeBack>という文字とトモに帰ってきた新連載。講談社では東大入試のための実践テクニックの様なモノを書いているが、こちらでは元ジュニアフェザー級王座のボクサーが、経営に乗り出すHow toモノコミックとなっている。主人公を元世界チャンプのボクサー、共同経営者が元・漫画家志望の秋田からの高校時代の友人というのが、変に現実感が伴っている。つ〜か、おかしい。このキャラ設定で7割勝っている感じ。なんつ〜か、土田世紀「ギラギラ」が終わってしまった寂しさを埋めてくれそう(ウソ)

「怪獣の家」星里もちる

小学館に転出してから、一貫して「婚約直前の二人」「何故か同居する羽目に陥った赤の他人」と、やたら疑似家族モノを書き続け来た星里もちるの新連載。こいつ絶対、D.Oの「家族計画」に嵌っているに違いネ〜〜と邪推がとまらない。中吊り広告も出た新連載が、この「怪獣の家」。何故か、新築一戸建てを売ろうとしている青年、福田。ところが、その家が油谷(当然、元ネタは円谷)監督の新作怪獣映画で破壊されるモデルの家になってしまったが故に、怪獣マニアの女の子と、その映画に出演するちょっと落ち目で、妹の元同級生だったアイドルと同居することに……というのがコンセプト。その怪獣映画のストーリーラインが、明らかに「サンダ対ガイラ」。ガメラ好きなのは知っていたが、ここまでオタクシュミ全開なのは初めてだ。どうなるんだろう?

「戦車映画」吉田戦車

<高校のとき同じクラスになったやつに『君が怪獣博士の吉田君ですか』などと言われた>吉田戦車が、そのシュミを全開にしてURTLAMANを語るという変な映画エッセイ。思うのだが、これほどまでに自分のシュミ映画を語ってしかもそれを読者に面白いと思わせる語り口は、かの池田憲章を彷彿とさせるあたり、特撮ファンはすべからくこの戦車映画を読むべきだと思う。

うれしかった。今まで生きてきたすべてを、怪獣好きの子供っぽい部分のすべてを肯定してもらったような気がした。(中略)
特撮が好きだなんていうのは、やっぱりいい歳して恥ずかしいことなのである。世間様に対して恥ずかしい、うしろめたい感じが快感であるとも言えるのだが、その劣等感の中には「いつか見ていろよ…」という気持ちが常にくすぶっているのである。作り手でもないくせに。
この映画はそう言う気持ちを救ってくれた。『仮面ライダー』の映画は救ってくれないので、これに刺激を受けて発奮してほしいものだ。

と書いてしまうあたり、なんとゆ〜か、ファミ通でゴッドボンボンを描いている中で「同級生2の旅館の女将、永島佐知子が好きなんじゃ〜」といって4歳の娘からたしなめられている時からいっこうに変わっていないトンガリ具合に萌え萌えである。

「覇−LOAD−」作・武論尊 画・池上遼一

武論尊の描く「オレ三国志」の8回目。邪馬台国で卑弥呼による日本統一を果たした燎宇という主人公が、中国に渡って劉備になり代わって、三国志で活躍するという話。いや、主人公が中国に渡って、オレ歴史で語り合っちゃうのであれば、素直に「蒼天の拳」に協力してあげればいいジャンかと誰もが思うのだが、そうは行かないのが武論尊の誇りだ(大袈裟です)。どうにも最後がグダグタになりそうな予感がするが、とりあえず格好良さげ。武論尊ファンとしてはとりあえず見逃せない。

医龍乃木坂太郎 原案:永井明

僕は、君を助教授に上げた時から、教授にするつもりなんて、なかったんだよ。
君は、信念が強すぎるからだ。
現実の大きな波にたった一人の人間が立ち向かうなんてそもそもが無謀だが…信念で舵を取る船頭は、――それをする!
今日で君はエトラッセン(退院)だ。

酷薄な細目を、白目を黒くしたりと思ったらり白くしたりトーン貼ったり、眼鏡に対面する相手の顔が映ったりと演技が忙しい(ウギャー)野口教授がドス黒くでキュート。ある意味この雑誌でもっとも青臭い話だが、それを迫力で押し切ってしまおうとするあたりが、このマンガの持ち味。加藤助教授の手持ちカードはこれでなくなったわけだが、次号の展開が気になる。

「社長DEジャンケン隊」現代洋子

今回ジャンケンする社長は、アップリカ葛西(株)の葛西得男社長。また微妙に香ばしい(C)切込隊長、セレクションだと思う。ただその選択の妙が、担当編集八巻の手腕な訳で、ある種「社長」という対戦相手カテゴライズを選んだ段階で、企画としての面白さを確定させている。今回もまた現代の負けで「37180円」ナリ。

「先生がいっぱい」安田弘之

生徒そっちのけの学園マンガ。頭でっかちで生真面目で、生徒に弄られまくっている中学校教師トカチンこと、十日市の日常をつづったマンガ。今回は、また自分を縛っている枠の一つ「生徒を恋愛対象として見ても良いんじゃない?」を外される話。なんというか直接的に中二病に立ち向かっているあたりが非常に興味深い。

「女の子ものがたり」西原理恵子

いよいよ、佳境となって参りました、西原理恵子の中学編。「ばか捨て山」に入った西原理恵子ら、友達三人組の底辺をさすらうようなマンガ。西原の友達二人は、常に家出しているわけだが、転がり込むのは隣町不良のたかくんの、下がボロボロ倉庫の安アパート。たかくんの口癖は「オレはなぁすごい金持ちの長男でなあ、月のこずかいが100万ぞ」(痛すぎます)。そのくせ何故か、ドライブの前にはでガソリン泥棒する。そしてブスの西原たちはガソリン泥棒には付き合わされ、チューブを持たされるが、家までは送ってもらえない。

電車通りまでは遠くて暗くて
私達はどこの中学に行っても、
ヤンキーになっても
さえないまんまだった

高知のドロの中をはいずる回るような痛い中学生活の描写が続いていくのが楽しみ(このあたりが有川浩とは違うところ)。う〜ん、上京ものがたりの経緯を知っている以上は、この中で西原三人組が救われることはないのだが、それをどう演出していくか? 中学生篇に入ってから、マガジンチックなヤンキー漫画とは一線を画した情景を描きそうなのが期待。
総じて、「キーチ!!」「ラーメン発見伝」などを含めて、若さと無能力であることをどうやって慰撫していくかみたいなのが、変に雑誌の底流にあるのが面白い。「漫歌エロチカ」で相原コージは、漫画家生活20周年記念4コマと銘打って、なんか自身のギャグマンガにおける総括みたいなことをやっている。
何らかの形で掲載作品が、自身の過去やオタク性をどう昇華していったかみたいなことを泥臭いながらも提示しているのが、変な雰囲気を醸し出している原因かなとも思う。