キネ旬1976年度ベスト・テン表彰式(千代田劇場1977年2月9日)

http://www.ne.jp/asahi/ayu-kawa/sou/ticketseikatu77.html(最下部)
昨日のキネ旬編集長交代劇絡みの話。映画業界の裏面史の一つといっても過言ではない。なんか70年代末は学生運動色んな残り火があったせいか、色んなところで労働争議に近い熱さが残っているなぁ。

1部は本年度ベストワンの「青春の殺人者」が上映され、次いで5時30分から表彰式。司会は新編集長の黒井和男氏。最初に上森子鐵社長が挨拶に立つ。 しかし、だれかの大きな咳払いを合図に客席のあちらこちらからヤジと怒号が上森に浴びせ掛けられた。「総会屋!」「読者を無視するな!」「白井さんを出せ!」。
 思わぬハプニングに、上森の声は震え、顔面蒼白。
「これはキネ旬だけの式ではない。日本映画界の重要なイベントだ。キミらに妨害される筋合いはない!」
さすがに総会屋、大音声で反撃。しかし、ヤジは司会の黒井にも投げられる。「オマエはそんなにまでして編集長になりたいのか!」

この後、キネ旬はメジャー化しつつも、雑誌がつまんなくなったといってだんだんサブカル映画雑誌の地位からずり落ちてくるらしい(さすがに伝聞)。映画秘宝の創刊は何年だっけ? わりと創刊時から洋画が多かったのだろうか? あ〜このあたりの若者文化も調べたいのだが。根本的に時間がない。深夜ラジオ関係も追加調査をしたいのだが、時間がない。
これ以降、色んな意味で決定的に邦画の地位がどんどんと落ちていく。
視点として面白いなぁと思うのは、「太陽風交点事件」もまた70年代末から80年代初頭に発生している。一般企業における労働問題などがある程度解決してきた後に、エンターテインメント業界(出版・映画)において、会社経営者側・編集者側・作家&映画監督側(加えてそれを享受する消費者=読者側)のパワーバランスが決定的に崩れてきたのが、ほぼこの年代だったのかもしれない。
この後に、角川春樹が映画・出版産業に置いて引っかき回してしまう80年代へと繋がっていくわけだが……。

あ〜、こういった面白視点で誰か本を書かないかなぁ? アイディアと資料を提供するから。コミック分野に関しては、かなり大塚英志が書いてくれただけに概要保存が進んでいるのだけれど、深夜ラジオ・TV番組・映画産業はまだまだ少ないし、大衆文化とオタク文化の乖離・先鋭化などまだ扱わにゃいけない話題がいっぱいあるのに、ほとんど未開拓なので。

ついでに言うと、こういった歴史物は、10年〜15年毎に誰かが面白可笑しく売れるように、かつ関係者の不快感を煽らないようにかける人材が書いていかなきゃいけないのだが、なかなかそうした人って現れてこないからなぁ。
昔は、雑誌上の連載で語ってくれる人がいたモノなんだけど、最近はそうした雑誌も少なくなった。

太陽風交点事件」は各人でググって下さい。頑張って捜すと全容が分かってくるみたい。
http://www2.ocn.ne.jp/~nukunuku/MyPage/AYUMI.HTM