「コロニー落とし」は一般用語?

ヤングアニマルで連載していたあかほりさとる原作『MOUSE』が今号で連載終了となった。
クライマックスは、ステロタイプではあるものの90年代的な王道をストレートに描いたもので、三大暴走シリーズを思わせるテイストにしばし懐かしさを感じた。
ただちょっと疑問に思ったのが前回のMOUSEの大技だった。
富士山麓地下で地脈エネルギーを操る敵に対して、MOUSEは地脈の流れを絶とうとする。
全財産とNASA他の技術力を投入して、衛星軌道上にリング上の構築物を作り、それを地上に落下させる。その時に空気中の水分を氷として凝結させて、富士山麓を氷の輪で囲んでしまい、五行相克の「土を水で絶つ」の理で地脈を絶つという技だ。
ところが不思議なことに衛星軌道上に作る構築物が、オニールの提唱した島3号型のコロニーの形状をしている。太陽光反射ミラーもある(工場・農業ドラムはない)。ただし茶筒というよりもっと寸胴で、むしろバームクーヘンみたいな形をしている。
MOUSEの台詞も下記の通り

MOUSE『(富士山麓に)コロニーを落とすんだ』

いや、それ単なるリング状構築物で、スペースコロニー=「宇宙植民地」じゃないし。島3号の設置場所であるラグランジュポイントにすら置いてないのに。ページ数に限界があるマンガで説明するにはムリがあるからしょうがない部分もあるのだろうが、しかし「コロニー」って。
ひょっとして衛星軌道上(宇宙)から大質量物体を落として地表を攻撃する攻撃方法って、日本では(落とすのがコロニーでなくても)「コロニー落とし」という名称で一般化してしまっているんだろうかと思うとちょっと複雑な気がした。
「マスドライバー」(月は無慈悲な夜の女王ドラグナー)は射出装置としての意味合いだし、「遊星爆弾」(宇宙戦艦ヤマト)は意味が違う。「質量攻撃」(エヴァンゲリオンのサハクィエル)か「質量爆撃」っていうのが一番近いのだろうけれど直感的には分かりにくいかという気もする。ああそうそう、「AKIRA」でのSOL落としというのもあったのを指摘されて思い出す。
アニメ、コミック、小説を問わず類似例は山というほどあるので、少し配慮した設定をしてくれるとせっかくのクライマックスだけに良くなったのではという気がした【考えるにMOUSEは近年ではあかほりさとるが主軸として行ったモノとしては最後のアニメ化作品ではないだろうか】

【以下は余談、それほどでもない】
その後のコロニーに着氷した氷が落ちてくる云々というのも、別に五行説を持ち出さなくても単なる鉄のリングでいいのではとは思った。大気圏突入中に水分集めて氷をつくるってちょっと現実的なのかどうかよく分からない。
パタリロにの映画化もされた話「パタリロ!スターダスト計画」では、ダイヤモンドを宇宙に打ち上げ、それを核として氷の隕石を作り地表を攻撃するというネタがあった。しかしこれも25年以上前の話で、今使うにはちょっと現実味が薄いような気もする。海外のSF小説・映画で「氷の隕石による地表爆撃」というスターダスト計画の元ネタがあったかどうかまでは未確認(ペリー・ローダンの1巻タイトルとかは関係ないか。地表じゃないけど、氷の隕石による攻撃自体は銀河英雄伝説で、アルテミスの首飾りを攻撃するシーンで登場するが、あれも宇宙空間の話だ)。

いや、パタリロは初期の方が面白かったなぁというそれだけの話。