超高級時計Type370の《ネジ巻き》、この驚くべきメカニック

Type370には、リューズもベゼルダイヤルもない。ではどうやってネジを巻き上げたり、時間を合わせるかというと、時刻調整専用ツール《スターター》という専用ツールをもちいて、時計の裏面(ケースバック)に空いた穴(これがリューズ)に差し込んで調整するのだ。
普通だとジーコジーコとネジを巻くのだが、この《スターター》を使うと一瞬でネジを巻くことが出来る。しかも《スターター》の中には液体シリコンを内蔵した調速装置が、一定の強さでネジを巻くためにネジを巻きすぎて時計を壊す心配もないとのこと。
……というか、この《スターター》自体が、本体と同様に3年以上の開発期間がかかっているのだから、下手な時計よりも精密機械となっている。
構造は以下の通り

  1. 第1段 根元部分には減速装置ダイヤルが収められている。クリップ部分を回すことで《スターター》内に時計本体のネジを巻くエネルギーを蓄える。
  2. 第2段 ゼンマイが2つ並列に収められている。クラッチ・システムと接続され、その回転が減速装置を通しての力のかかりすぎを防止する。
  3. 第3段 ゼンマイの回転を伝達する歯車が収められている。
  4. 第4段 調速装置が収められている。液体シリコンを充満させたシリンダー内を羽の付いた軸が回転する仕組みになっている。
  5. 第5段 この《先端》部分を、ケースバックの穴に押し付けて時計本体のネジを巻く。

車のクランクを回して、エンジンをかけるのに近いと言えばよいだろうか? 確かに機械式時計は上手くネジを巻かないと故障の原因になるが、その為だけにこんなドライバーの大親分みたいなのを作り上げるのだから、スイスの時計職人のこだわりには頭が下がる。
これを使って時刻も合わせるらしいのだが、ちょっとそのやり方までは分からない。誰か知っていたら教えてください。

ちなみに、この『モントル ブガッティ Type370』のスペックを書いておこう。

モントル ブガッティ Type370

ムーブメント

パルミジャーニ・フルリエ完全自社製造ムーヴメント、手巻きキャリバー370
2個の香箱(ゼンマイ)を直列に配列。
21,600振動/時
ムーヴメントサイズ:21㎜×16㎜×27.4㎜
石数:37
パワーリザーブ:10日

表示機能

時、分、パワーリザーブ表示(ドラム回転表示)

ケース

18Kホワイトゴールド製。5箇所のオープニングにサファイアクリスタルガラスを使用。

ストラップ

エルメス製カーフ・ストラップ、ホワイトゴールド製フォルディングクラスプ付き。

ダイヤルカラー

ルージュ、ノアール、プジョンヌの3タイプ。各色50本の限定生産。

価格(税込)

3タイプとも、2,992万5千円

もうどうでもいい追記だが、一応書いておく。
共同開発したブガッティは、この時計と同時発売するべく超高級車も製造中であった。すでに一度は完成した。当然、ブガッティが作る車なので、フランスの威信をかけてマイバッハをも越える超高級車である。
ところが、リキを入れて作りすぎたために、エンジン出力が1100馬力をマーク。さすがに公道を走ることが不可能になってしまった。……なんかタイヤが持たないらしい。最近、F1も様々な規制で1000馬力には行かず、現在は900馬力くらいなので推して知るべし。
と言うわけで現在、700馬力程度に再設計中らしい。
なんという馬鹿馬鹿しさか! 気持ちいい。

実物は日本でも購入することが出来るが……まぁ、少なくとも日本では店頭に並べていたりはしない。実物をどうしても見たいという方は、ミラノにある時計店GRIMOLDI(ドゥオモ広場店)をのぞくと実物が見られるらしいので報告まで。
http://www.geocities.jp/tokeihakase/zodiac.html

◆仏語で読めないが、モントル ブガッティ Type370の公式サイト
La Cote des Montres : Parmigiani Fleurier Bugatti