ライトノベル・コミックの有力書店員出まくり! 西原理恵子の「営業ものがたり 東京編・大阪編」

特にスピリッツの世代というわけではないのだが、小学館スペリオールが面白い。このコラムコミックの多彩さはちょっと他の追随を許さない。
とくに前号の24号、今号の1号はぶっちぎりである。

戦車映画

吉田戦車が映画を語る人気コラム。1号では「ゴジラファイナルウォーズ」である。酷評相次ぐ「GFW」(通の人はこう略すらしい)だが、吉田戦車は独自の観点から絶賛。なぜこの人はこうも子供の心で映画を見ることが出来るのか、非常に不思議だ。

ゴジラはなぜ以前と比べて観客を呼べなくなったのか、理由は色々あるだろうが、やはり「着ぐるみ直立ゆっくり歩行モンスター」というものが、存在としてどうしようもなく古くなってしまった、ということはあるだろう。ティラノサウルスが両脚としっぽで巨体を支えていたと思われていた時代の遺物であるゴジラのデザインは、はっきりともう古い。
スピーディーな異動、変形が可能なガメラの方が、演出の幅が広がる分、怪獣映画として生き残る可能性はありそうだ。

と、えらく蘊蓄を重ねることの出来るほどの教養を持ちつつ、また片方では

個人的には「轟天号ゴジラ」にしびれた。そして世界中で怪獣相手に戦う「ランブリング」「火龍」「エクレール」の勇姿に拳を握りしめた。ああ、おれって空飛ぶ戦艦がすきだったんだ、とあらためて自分の男の子性を確認したものだ。
(中略)
ゴジラがUSAゴジラを一発でぶっ飛ばしたときは本当に声が出た。

子供かッ! 吉田戦車ッ!!とオイラの方が声が出た。なんか『銀の匙』を読んでいるような(執筆者が子供か大人か分からないような)不思議な感覚にとらわれる映画評が、とりわけ特撮・アニメ映画関連では繰り広げらている。
次回はULTRAMANとのこと。

西原理恵子の「営業ものがたり 東京編・大阪編」

上京ものがたりが発売されたため、プロモーションの為の特別編が、前号・今号と続いている。西原理恵子が、「上京ものがたり」の書店営業に行くという話。
上京ものがたり自体は、2004-11-29 - さて次の企画はにも書いたとおりに、西原理恵子がイラストを学ぶために専門学校に通うべく上京してきてから、一人前のイラストレーターとして活躍できるまでの苦労譚を描いたエッセイコミックである。
オイラも買ったのだが、とにかく書店のどこに置いてあるかが分かり難い本である。書店員が走り回って、コミックではなくて女性専門誌コーナーで見つけれくれた(流石に西原のコミック探しにその場所まではオイラも足を伸ばさなかった)誌担当編集者の八巻氏は

今回の「上京ものがたり」は従来の西原理恵子色を最もうすめました。
年末のクリスマスプレゼント用にぜひ

というくらい、西原色が見えないオサレな本となっている。個人的にはこれは詐欺何じゃないかとも思う。
このコミックにも書かれているが西原といえば例えば、大阪の牛すじの煮込みのことを

牛すじなんてさあ
誰もが捨てるとこからダシとってさあ
その味をコンニャクにしませて肉のフリさせるんだよ
精進料理じゃないよ
貧乏でだよ
それをさらに天プラの残りカスとクズ野菜いれて粉かけて
世界一汚い琵琶湖の水でとくんだよ

という毒舌っぷりが魅力なのだが、たしかにパッケージやら本文を見る限りでは、それが感じられないのが「上京ものがたり」の不思議なところだ。あれは連載最後で愛ちゃんと落とす所こそが魅力なのだと思うのだが、確かにアレでは女性には売れないだろうなぁ。
そんなストレスをブッチギルように、販促のための「営業ものがたり」はネタを飛ばしている。
前号では、仇敵くらたま(倉田真由美)をやり玉に挙げたかと思えば、今回は大阪の書店さんに投げた言葉が

(先日、書店でみたんで)
私を田島みるく
成田アキラの間に並べないで下さい

とか、はたまた東京編では

「セカチュー」と「いま、会いにゆきます」の間に並べて下さい

とか描いているし……。なにか久方ぶりに弾け飛んでいる西原節を見た感じだ。
確かに

今だに自分の単行本が「に」の棚にある

のは、やはり一般での知名度が低いからなのだろうか?(いや書店員の意識が低いのか)
そういう豪傑奇譚の宝庫とも言うべき、西原理恵子がまぁ担当の八巻さんと、東京・大阪の大切な書店への接待をするというのが今回の漫画なのだが……。
接待される側で、コミックに出てくる書店員自体が、一癖二癖ある人ばかりになるのもやむを得ないのかも知れない。というか、そういう人じゃないと例え接待される側であったとしても油断できない。
かの、ホステス再挑戦漫画「ホステスできるかな?」で北方謙三大沢在昌に「ほら乳揉みたくなったか、カモン!カモン!」?とか描いてあったのは、既にオイラの中では伝説と化している。
というわけで、その場に現れた書店員さんの中に……
前回の東京編では「田中@ジュンク池袋様」
今回の大阪篇では「わんだ〜らんど なんば店/羽根田靖様」
がいたとしても不思議でも何でもない。
このサイトでも「メリッサ・Pの置き場所は?」でコメント欄に書き込みのあった田中さんと、「日本で一番ライトノベルに詳しい書店」で言及してVol.2ではエッセイも書いて羽根田さんである。ちゃんと二人ともイラスト化して出演しているし。
他にもライトノベル完全読本 Vol.2 (日経BPムック)などでお世話になっている著名書店員が出まくりという、書評系サイトを巡回している人ならば、絶対押さえておかねばいけないような、えらく面白いエッセイコミックになっています。
東京編では若い女性店員向けに画像に貼ったような、ヒヨコがヤっていて

やだ、こわれちゃう

とか言っているセクハラサイン色紙を西原理恵子は描いてあげたらしい。
遠回しの嫌がらせとした思えないが……。普通、大切な書店への接待営業でこんなことはやらない。いや、あかほりさとるがやったという噂もあるが……。
とにかくスペリオールのコミックコラムは現代洋子の「社長DEじゃんけん隊」も載っていて、面白い。